合意と運用をつなぐ
参考モデルを使う場合も、成果物と双方の義務を自社業務へ置き換えます。
根拠1を確認対象件数と完了定義を固定し、受領から提出までの記録で測ります。除外後の達成率だけでなく全体の遅延と未解決も表示し、重大事故は月次平均から切り離して即時対応するルールを設けます。
経理代行のSLA実務ガイド
SLAはService Level Agreementの略で、サービスの内容や水準を当事者間で合意するものです。経理代行では「毎月早く締める」「ミスなく入力する」という表現だけでは、何を達成したら完了なのか判定できません。対象業務、資料の受領条件、成果物、計算式、記録、未達時の行動をセットで決めます。本記事では、契約上の水準と日常改善用のKPIを分け、良く見える数字を作るための除外に偏らない設計を紹介します。
IPAのITサービス委託に関する公開事例は、委託元が要求を示し、提供側と調整して契約へ反映する考え方を紹介しています。ただしITの稼働率や脆弱性対応基準を、そのまま記帳精度に置き換えることはできません。ここでは経理業務の実態に合わせた独自の設計例を示します。数値の目標、営業日、受付時間、未達に伴う費用・責任は、実際の契約と双方の合意で定めます。
QUICK ANSWER
数値だけの目標を、双方が再計算できる合意へ変えます。
| 条件 | 記載例 | 曖昧な場合の問題 |
|---|---|---|
| 対象と成果物 | 対象月の承認用試算表・照合結果・未解決一覧 | 入力完了と月次完了の取り違え |
| 時計と期限 | 指定受付時間内の完全受領から提出まで | 夜間・休日・確認待ちで計算が割れる |
| 測定と例外 | 対象台帳、分母、停止理由、再開時刻 | 難しい案件を除いて高得点にできる |
| 未達と改善 | 通知先、暫定措置、是正担当、再評価 | 月報を配るだけで同じ遅れを繰り返す |
この表は設計の例であり、掲載した条件が当社の一律保証となるものではありません。
EVIDENCE & DECISION
契約資料は合意を整理する参考です。経理業務の目標値は、自社の対象量と記録から決めます。

VISUAL GUIDE
未達を消すためではなく、次の業務を改善するために記録します。
仕訳行、請求書、問い合わせ、月次成果物は別単位です。今月は伝票数、翌月は修正行数で計算すれば、品質の変化ではなく数え方の変化を見てしまいます。
単に顧客回答待ちと記録するだけでは、いつ何を質問し、いつ回答されたのか再現できません。受託側の確認遅れまで会社都合へ付け替えない仕組みが必要です。
集計担当が数字を出しても、手順を変えられる責任者がいなければ改善は進みません。費用や範囲の変更を含め、双方の決裁者が同じ記録で判断します。
支払準備や月次報告など、遅れたときの影響が大きい工程と、必要な成果物を選びます。
受付時間、完全受領、完了、分母、除外、営業日を決め、例示案件で再計算します。
試行期間の記録から実現可能な目標案を作ります。欠けている時刻や件数は測定不能として区別します。
双方責任者が水準・緊急連絡・追加条件を確認し、適用版と開始日を管理します。
全体遅延と対象内達成率を併記し、重大事故は別ルートで、通常未達は是正計画で対応します。
是正の効果を確認し、数量や体制の変化があれば、過去実績を保持して将来の条件を更新します。
期日までに仕訳一覧が届いても、預金残高や未払の差が不明なら経営判断は止まります。会社が求める成果物と、提供側が完了と呼ぶ状態を合わせる必要があります。
提出遅延や回答待ちをすべて分母から外すと、会社全体の遅れが評価から消えます。受託側の処理時間と、依頼から会社承認までの経過を両方残します。
誤字の修正と二重支払では影響が違います。件数の平均だけでは事故の重大性が薄まるため、支払・給与・情報漏えい等への影響で別の連絡経路を用意します。
自動返信が速くても、担当者や次回の回答予定が分からなければ業務は進みません。受領通知、内容を把握した初動、最終解決を区別して測る必要があります。
最初に請求発行、支払準備、給与資料、月次報告などから重要業務を選びます。月次報告なら試算表に加えて残高照合と未解決一覧を含むか、会社承認前の提出までかを明記します。単なる入力終了を、確認済みの月次完了と呼ばないよう状態名をそろえます。
成果物はファイル名だけでなく版番号と必要項目を定めます。修正が必要な初回提出を期限達成に数えるのか、受入条件を満たした再提出時を完了にするのかも合意します。正確性を犠牲にして早く送る行動が有利にならない設計が重要です。
SLAの時計には受付日、受付締切時刻、営業カレンダー、時刻の基準を設定します。夕方に届いた資料を当日受領として扱うか翌営業日扱いとするかは、業務ごとに決めます。銀行の締切や給与支給日は、提供側の受付時間と別の制約として確認します。
経過時間と営業時間を混ぜると実績比較ができません。金曜の夕方から月曜の午前までをどのように数えるか、実際の一件で双方が再計算して確認します。災害やシステム障害による変更は、時計を無記録で変更せず、通知と合意した適用期間を残します。
処理開始に必要な証憑、対象月、法人・部門、承認、件数を定義します。受領時刻と完全性確認時刻は別に記録し、足りない項目を具体的に返します。受託側が数日後に初めて不足を確認して、その間をすべて会社の遅延とする運用は避けます。
一部の取引資料が不足しても、他の処理を進められる場合があります。業務を小さな単位へ分け、停止する範囲を特定します。到着していない原本が必要な判断と、先行してできる照合を分けることで、完全受領を理由に全作業が止まる状態を減らします。
期限内処理率は、合意した前提を満たす対象のうち、期限までに完了した数を同じ単位で割って計算します。仮に全100件中10件が合意済みの対象外で、残る90件のうち87件が期限内なら、対象内の率は96.7%です。これは架空の計算例で目標値ではありません。
この場合、除外10件の理由と、全100件のうち実際に期限内で完了した件数も別に報告します。分母がゼロの月を100%とせず、対象なしと表示します。先月の未処理を当月へ移す場合は元の期限を残し、持越しによって遅延履歴が消えないようにします。
成果物の誤りは、対象伝票やファイルの識別番号、誤りの内容、発見工程、影響、修正完了時刻を記録します。初回提出前に内部で発見した不備と、受入後に顧客が発見した誤りを分けます。確認する範囲が抜取なら、全件を保証する精度表示にはしません。
一件に複数修正がある場合、誤りのある案件数と修正項目数を分けると、同じ不備を重複計上せずに負担も把握できます。金額差を相殺してゼロとせず過大と過小を残します。重大な誤りは件数率とは別に報告し、再発の有無を継続して追います。
初動は自動応答ではなく、担当、把握した問題、追加情報、次回連絡予定を示す応答として定義します。解決は回答送信だけでなく、会社側が業務を再開できる状態かを確認します。専門家への照会が必要な案件は、その依頼先と回答予定を分けて表示します。
平均初動時間に加え、未回答件数と最長の待ち時間を見ます。月末に未解決の質問を翌月集計から外すと、長期滞留が見えなくなります。会社から新しい論点が追加された場合は関連番号で分け、元の質問を勝手に解決済みにしないようにします。
資料不足、会社承認待ち、銀行・会計サービスの停止などを理由コードで分けます。時計を止める場合は、必要な対応を誰へいつ通知したか、どの処理が止まったか、再開条件と時刻を残します。確認すれば進められた作業まで一括で除外しません。
原因に争いがある案件は双方確認中として記録し、集計担当だけで責任区分を決めません。月次資料では除外件数の増加も改善対象にします。受託側の達成率が改善しても、全体の提出遅延が増えたなら、業務の分担や受付設計を見直す必要があります。
二重支払の疑い、給与データ誤送付、認証情報流出など、金銭や個人データへ大きな影響があり得る事象は、通常の月次レビューを待ちません。検知後の連絡先、停止判断者、被害拡大防止、証拠保全の役割を定めます。状況未確定でも速報する条件を合意します。
重大度は金額だけでなく対象人数、外部影響、復旧可能性で判断します。初報では判明事項と未確認事項を分け、確証のない原因を断定しません。個人情報の漏えい等に関する報告義務の要否や期限は、社内責任者が最新の公的案内と専門家へ確認します。
通常の対象量、繁忙期、追加業務、資料形式の変更が起きた場合、どの時点で再見積もりや期限調整を行うかを決めます。対象量は仕訳数だけでなく、口座数、部門数、複雑な精算書、問い合わせの実態も確認します。条件変更は適用前後の版を区別します。
件数増を理由に過去の未達を後から消さないことが大切です。変更を認める対象、開始日、通知方法、影響額を双方で承認し、既存の未解決案件への適用も決めます。契約上の減額、損害賠償、解除等の効果は一律に断定せず、契約内容と法的助言で確認します。
月次レビューでは数字を読み上げるだけでなく、重要な未達を選び、直接原因と仕組み上の原因を分けます。入力者の注意不足で終わらせず、必要項目、確認順序、負荷、担当不在、システム設定のどこを直すかを決めます。担当と期限を付けた是正計画を残します。
改善後は同じ測定定義で再評価し、変更によって別の工程へ負担が移っていないか確認します。達成できない目標は根拠を示して協議しますが、重大な未解決を許容するためだけに基準を下げません。記録が取れない指標は測定方法から見直します。
比較時には「月次完了」の定義を各社へ同じ質問で確認します。記帳、残高照合、会社への質問、税理士への受渡しを含むかで工数が変わります。提供側の回答速度だけを比較しても、必要な前工程や会社承認の負担が異なれば適切な評価になりません。
キャシュモの公開する標準化・ダブルチェックは、工程と確認を分ける際の比較材料です。葵パートナーズの公開サービスも記帳・請求・支払予定等を分けて確認できます。ただし、公開説明から両社の個別SLA、精度実績、事故対応時間を推定しません。自社の契約条件は書面で確かめます。
導入テストには正常な一か月だけでなく、資料不足、差戻し、回答待ちの案件を含めます。時刻が自動記録されない場合は簡単な受付票から始め、測定のための入力工数も確認します。給与額や口座情報を評価資料へ必要以上に転記せず、案件番号で原資料へ戻れるようにします。
社内で使う改善目標と、契約上の約束を同じ色や欄で表示すると誤解が生じます。各指標に「合意水準」「試行目標」「参考観測」を付け、未達の効果と変更承認者を区別します。法的な責任の解釈は、運用担当だけで決めず契約責任者と専門家へ確認してください。
会社は取引事実、契約、金額、期限、例外、資金移動、最終承認を担います。経理代行は承認済み資料の整理、入力、照合、一覧化、結果報告を支援します。
税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士、社会保険・労働保険の申請書等の作成や提出代行等は社会保険労務士、契約その他の法的判断は弁護士へ確認します。
READY-TO-USE TEMPLATE
業務範囲を打ち合わせるための確認表です。実際の処理履歴を記入する台帳ではありません。下表の資料・責任者・時点を基に、運用台帳へ担当者名、期限、結果、未解決理由を追加してください。
| 確認する実務 | 用意する資料・記録 | 会社側の確認者 | 確認時点 |
|---|---|---|---|
| 対象業務と完了定義 | 対象業務・成果物仕様書 | 委託管理責任者 | 契約前・範囲変更時 |
| 受付時刻と営業日 | 受付時間・営業日カレンダー | 双方の運用責任者 | 運用開始前・休日設定変更時 |
| 必要資料と完全受領 | 受領・不足・再提出ログ | 提出部門・受領担当 | 資料受領時・不足判明時 |
| 分母と測定対象 | 対象母集団・除外理由一覧 | 品質管理責任者 | 集計開始前・月次報告時 |
| 品質と修正の数え方 | 誤り・差戻し・影響管理票 | 確認者・会社受入責任者 | 検知時・修正受入時 |
| 問い合わせ初動と解決 | 問い合わせ受付・応答・解決履歴 | 問い合わせ担当・業務責任者 | 受信時・応答時・終結確認時 |
| 停止・除外と依存関係 | 停止・再開・原因確認記録 | 双方の責任者 | 停止通知時・再開時 |
| 重大事故と緊急連絡 | 重大度区分・緊急連絡網 | 事故対応責任者 | 事故検知時・訓練時 |
| 数量変動と条件変更 | 数量実績・変更合意履歴 | 契約責任者 | 増減見込み判明時・変更前 |
| 是正措置と再評価 | 月次評価・是正・再測定票 | 委託元決裁者・提供側責任者 | 月次定例・是正期限到来時 |
記入例を自社条件へ置き換えて使用してください。コピーすると表計算ソフトへ貼り付けられるタブ区切り形式になります。
架空例として、月次報告の期限は守られているのに、経営者が二週間後まで判断できない会社を想定します。調べると入金差の一覧と不足資料の連絡が遅れていました。成果物へ未解決の金額・担当・回答期限を加え、初回提出と修正受入を分けて記録します。この例の目的は測定対象の見直しであり、特定の日数短縮や当社の品質保証を示すものではありません。
初回提出で必須項目がそろった件数÷初回提出総件数×100
条件を満たす対象の期限内完了数÷同対象総数×100
元の対象全件の期限内完了数÷対象全件数×100。除外理由を併記
受入後に提供側の修正が必要な成果物数÷受入成果物数×100
問い合わせ受付から定義した初動応答までの営業時間。未応答も表示
金銭・給与・機密等へ重大影響を及ぼし得る未終結案件数
SERVICE
当社との打ち合わせでは、経理代行へ求める成果物、月間量、会社側の資料締切、会議日を整理します。記帳・照合・未解決報告のどこまでを対象とするか確認し、測定可能な項目から運用案をご案内します。掲載した数式や例示期間がすべての契約へ自動適用されるわけではありません。
成果物・提出条件・目標・除外・是正と契約変更を合意
合意済みの資料整理、記帳、照合、集計と未解決事項の報告を支援
税務・労務・法務・システム上の専門判断と、会社が承認するための回答を担当
対応範囲は資料量、件数、利用システム、締め、例外処理を確認して事前にご案内します。専門資格が必要な判断・書類作成・代理手続きは当社サービスの範囲外です。
PRICE
記帳・給与計算・請求書発行をセットにした、規模に合わせて選べる月額プランです。業務量や資料の状態を確認したうえで、必要な範囲をご案内します。
横にスワイプしてプランを確認できます
〜5名・小規模事業者向け
記帳・給与計算・請求書発行をセットで
〜10名・中小規模向け
記帳・給与計算・請求書発行をセットで
〜15名・成長企業向け
記帳・給与計算・請求書発行をセットで
仕訳数・人数・請求書の件数を超える場合は追加費用が発生します。詳しくはお問い合わせください。
料金ページを見る →FAQ
A. SLAは当事者が合意するサービス内容・水準等、KPIは運用を観測する指標です。KPIをSLAに採用することはできますが、すべての観測値を保証として扱わず、契約上の効果を区別します。
A. 分母、対象範囲、検知方法、重大度が分からなければ判断できません。一件の重大誤りが平均値へ隠れないよう、重大案件と未解決を別に確認します。
A. 事前に合意した条件に該当するか、通知・停止・再開の記録で判定します。除外後の数値だけでなく全体遅延と除外理由を併記し、会社側の改善にもつなげます。
A. 一律には決まりません。是正対応、減額、契約解除等の条件は契約次第です。業務上の改善手順と法的効果を分け、疑義があれば契約責任者と弁護士等へ確認します。
本文の判断軸と、確認に使った一次情報の対応を示します。
IPAの契約資料・IT委託事例は合意形成の参考に限定。個人情報、電子証憑、専門判断の役割は各公的案内を確認し、経理の指標と目標値は独自に設計しています。 本記事の確認表、指標、日程、分担、架空例は当社による設計提案です。法令や引用先が一律に定める標準、当社の導入実績、成果保証ではありません。実際の契約・件数・規程に合わせて合意してください。
経理代行のSLA実務ガイドでは、参照先の最新版と自社規程・実態を確認し、税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士、社会保険・労働保険の申請書等の作成や提出代行等は社会保険労務士、契約その他の法的判断は弁護士へご相談ください。
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